IBM Bob Premium Package for i の価値
Bobcoin 枯渇でほぼ畳水練ではありますが、IBM Bob Premium Package for i がどんなものか調べてみました。
本記事は基本的に IBM Bob のドキュメントサイト(英語)の記載(2026年8月13日時点)に基づいています。本格的に使い込んだわけではない点はご承知おきください。
IBM Bob Premium Package for i とは?
IBM Bob のサイトによると、IBM Bob Premium Package for i (以下「PP4i」と略)は「IBM Bob の AI 機能を IBM i アプリケーション開発環境に拡張」します。IBM i システムへのアクセスを提供し、開発者が「アプリケーションのライフサイクル全体にわたってより効果的に作業できるようにする」ものと説明されています。
PP4i は Bob 本体に同梱されているものではなく、後から拡張機能として Bob IDE に導入するアドオンです。導入されると、モード・ワークスペース・ツール・スキル・ワークフローといった要素を Bob 本体に対して登録します。この「登録する」ための受け口は Bob が独自に用意しているもので、汎用の VS Code にも他の AI 開発ツールにも相当する仕組みはありません。つまり PP4i は、Bob 専用の拡張として設計されています。
PP4i で追加されるもの
下表のような要素が PP4i で追加されます。結構な数ですね。
| 要素 | 数 | 内容 |
|---|---|---|
| モード | 2 | IBM i Developer(コードの説明・生成・コンパイル・テスト・文書化)、IBM i Database(Db2 for i の SQL の生成・モダナイズ・チューニング・レビュー) |
| ワークスペース | 3 | Local(ローカルのファイル)、Library List(ライブラリーリスト内のライブラリー・オブジェクト・メンバー)、Home Directory(ホームディレクトリー内のストリームファイル) |
| ツール | 20 | Read 6、Write 2、Execute 4、Build 2、Test 2、Documentation 4 |
| スキル | 44 | RPG 20、CL 4、DDS 4、Db2 for i & SQL 15、単体テスト 1 |
| スラッシュコマンド | 2 | /erd(Mermaid 形式の ER 図生成)、/review_SQL(SQL のレビュー。Database モードのみ) |
| ワークフロー | 5 | RPG モダナイゼーション、業務ルール抽出、RPGUnit テスト計画作成、同実装、SQL インデックス戦略 |
| 設定 | 3 | SQL 取得行数の上限、CL のライブラリー修飾の強制、承認を要する SQL 種別 |
これらの要素のうち、ツール類は自身で個別に導入・設定することで同等機能を実現できるものもあります。「同じことを他の環境でやろうとしたらどうなるか」という観点で、個々のツール単位で整理したのが下表です。
| 可否 | PP4i の要素 | 個別に用意する場合の代替 |
|---|---|---|
| 可 | read_member / write_member / search_qsys |
SSH + Rfile / system コマンド、または QSYS2 サービス経由の SQL |
read_stream_file / search_ifs |
SSH(PASE)で通常のファイル操作 | |
execute_cl_command |
system "CMD"(PASE 経由) |
|
execute_sql_statement |
Mapepire / JDBC / db2util |
|
execute_compile_action |
actions.json 相当を定義し system CRTBNDRPG 等 |
|
run_rpg_unit_test_suite |
RPGUnit の RUCALLTST を直接実行 |
|
| 不可 | search_ibm_i_docs_with_rag |
IBM 公式ドキュメントに対する専用のセマンティック検索のため、同等のものは用意できない |
| 44スキル+5ワークフロー | 自前で書く必要がある |
代替機能を自前で用意すること自体は可能です。しかし、それを自社の生成AI 開発者に標準的に配布し、導入させ、設定させるとなると、話が変わります。
- AI エージェント利用のための標準構成を決める
- 導入手順書を用意し、テストし、各開発者の環境で動くようにする
- 規約に沿ったスキルを書き、レビューし、更新する
- 環境差による「自分の手元では動かない」に対応する
これらは一度やれば終わりではなく、人が増えるたび、バージョンが上がるたびに発生します。結果として「隣の席の人と同じ結果が出ない」「あの人の環境でしか動かない」という状態になりがちです。
PDM や SEU であれば、どのマシンにログインしても同じキー操作で同じ画面が出て、同じ仕事ができます。当たり前のように思えますが、「どこでも同じツールで仕事ができる」環境は、実は実現が難しいのです。標準化されたパッケージとして配布されることには、機能一覧に現れない価値があります。
PP4i の価値 - 現時点での評価
PP4i の価値は大きく 2 つあると考えています。
1. 標準化されたパッケージとして提供されており、ワークをかけて個別にツールを設定する必要がない
前述のとおり、ツール類は「やろうと思えばできる」ものです。しかし「自分で個別に設定できる」と「パッケージとして提供されている」の間には大きな差があります。接続方法を決め、コンパイル定義を書き、権限とガードレールを設計し、動作確認をする——この一連の作業が完了した状態でパッケージ化されている、というのが PP4i の提供形態です。ライブラリー修飾の強制や、承認を要する SQL 種別の既定リストのように、既定値そのものが検討済みの成果物になっています。
2. IBM i ドメイン知識(44スキル)と5ワークフローが定型化されている
RPG/CL の規約を自社で制定し、それに沿ったスキルを整備していく作業は、それ自体が相応の投資になります。PP4i はその部分が最初から提供されているため、スキル整備と AI のトレーニングのワークが節減できます。RPG モダナイゼーションや業務ルール抽出といったワークフローも、手順そのものが製品として定義されている点に意味があります。
以上、公開情報と多少の試用から分かったことを紹介しました。Bobcoin の手当てができたらいろいろと試してみようと心待ちにしています。