IBM i 7.6の発表
IBM i の最新バージョンとなる7.6が発表されました。
利用可能予定日は2025/4/18で、同時に発表された7.5 TR6も同日から利用可能です。詳細は以下のWebページ(全て英語)を参照ください。
- 発表レター “IBM i 7.6 and IBM i Portfolio give strong foundation for continuous innovation”
- ランディング・ページ “IBM i 7.6 - Base Enhancements”
-
プログラム資料説明書 “PDF file for Memorandum to Users”
- 7.5 TR6 発表レター “IBM adds new capabilities and enhancements with IBM i 7.5 Software Technology Refresh 6”
- ランディング・ページ “IBM i 7.5 - TR6 Enhancements”
主に強化・拡張されたのは、MFA(多要素認証)を始めとするOS全般のセキュリティのようです。
個人的な見解ですが、セキュリティを強化すると使い勝手が悪くなるので、両者のバランスをとるのが大切と思っています。たとえばNavigator for i にMFAを適用した時に、運用に与えるインパクト(IBM i 7.4など異なるバージョンを併用するケースも多いでしょう)が見えないとなかなか評価しずらいです。
対して、「廃止される機能」はインパクトが明確です。7.6は長年サポートされていた多くの機能が除去されています。
- CGU、DFU、SDA、RLUなどADTSの一部機能。(PDMとSEUは継続される)
- Power9以前のサーバーのサポート。(現時点でPower10上でのみ稼働)
- ネットワーク機能の廃止 → PPP、Dial-Up、QoS、FRCA(Fast Response Cache Accelerator for Apache HTTP Server)
- 製品の終了 → IBM FAXサポート for i (5798-FAX)、OptiConnect (SS1、オプション23)、GDDM (SS1、オプション14)、Web Admin GUI (IBM Navigator for i 内のセキュア機能に置き換え)、コミュニケーション‧ユーティリティー (5761-CM1)、System/38 ユーティリティ (5761-DB1)、Business Graphics Utility (5761-DS2)、CICS Transaction Server for i (5770-DFH)、Java 11 (64 ビット) の JV1 オプション 19、Performance Tools for i (5770-PT1)のPerformance Graphics (オプション 9)およびPerformance Advisor (オプション 10)、Universal Manageability Enablement (5770-UME)
- 翻訳版の廃止 → アラビア語 (2954)、チェコ語 (2975)、デンマーク語 (2926)、オランダ語 (2923, 2963)、フィンランド語 (2925)など
変更された機能があり、運用や初期環境構築に考慮が必要になるケースがあるでしょう。
- パスワードレベル(QPWDLVL)システム値はデフォルト値3で出荷。(新規導入のみ)
- QPGMRユーザー・プロファイルから*SAVSYS特殊権限がなくなる
近々7.6をインストールする予定なので、使用感など追加するかもしれません。
“Release life cycle”によれば、2010年4月に7.1が出荷開始となってほぼ15年、IBM i もそろそろ再構築すべきと感じています。モダンなOSとして下記のような機能があるべきでしょう。
- ネイティブの文字コードをEBCDICからユニコード(UTF-8または16)に変更。
- 現在ITでもっとも広く使われているのはユニコード(例)であり、EBCDICのままだとアプリケーション要件が制約される(使える文字種、相互運用など)。
- ジョブのCCSIDも、DBのデフォルトの文字コードも全てUTF-8とする。
- CCSID 1399だと「吉野家」の「𠮷」(上が侍の「士」ではなくつちよし「土」)が表示できない。これはJIS規格(JIS2004)に「𠮷」が含まれないため。ユニコードであれば中国漢字の「𠮷」が使える。
- IVS(異体字セレクタ)が使えると漢字の表記の揺れにもある程度対応可能。
- Windowsは30年以上前(1993年)にNTで対応済み
- 5250画面(DDS)でネイティブにHTMLをサポート。
- WebFacingのような5250画面のWeb化ではなく、DDSでHTMLを記述できるようにしてクライアントはWebブラウザを使用。可変長フィールドやユニコードも使えるようにする。
- サインオン・セキュリティやセッション管理は5250の仕組みを継承。
- 運用向けにCUI(5250画面またはssh)を残す。
- エンドユーザー向けのアプリケーションはGUIで良いが、開発・運用にはCUIが必須。
- NavigatorやDCMのようなGUIはもちろんあって欲しいが、同等機能をCUI(コマンド)で実行できるようにすべき。
- DCMやNetServerをGUIでしか管理できないのは再現性や生産性を悪化させるので、下記のようなコマンドラインツールが提供されている
- Command-line tools for working with Digital Certificate Manager (DCM) on IBM i “DCM-tools”
- How can I manage IBM i NetServer without IBM i Navigator? “Manage IBM i NetServer without Navigator - GO NETS”
OSの再構築は時間がかかるので、それとは別にIBMにすぐに実施してほしいこともあります。以前より動画にしたいと思っているのですがなかなかモチベーションがあがらないので、一部のみこちらに挙げておきます。
- ACS5250表示装置セッションの品質の改善。正直、PC5250に戻してほしい。CUIなのに桁ずれする、設定をいじらないと「\」(バックスラッシュ)が表示できない、フォントがジャギーなどなど、改善できるとは思えません。「Javaの限界だから」というのはほとんどのユーザーにとって意味はないでしょう。(5250以外の、SQLスクリプトなどのアプレットは今のままでOKです)
- RDiの無償化。VSCodeやEclipseが無料なので、機能限定でも無料で提供すべき。自分の用途(CL/RPG/DDS/SQLでゴリゴリ開発)だとVSCode (Code for IBM i)よりRDiの方がはるかに優れている(日本語化されている、文法チェックがされる、編集の競合を検知する、などなど)のですが…