Power10スケールアウトモデルの発表
昨日、Power10プロセッサーを搭載したミドル~ローエンドのモデルが発表されました。詳細はIBMの下記情報を参照。
- ニュース・リリース:IBM、Power10 サーバーのラインナップを拡充し、急速に変化するビジネス要求に迅速に対応
- IBM Power ゼネラル・マネージャー Ken Kingによるブログ(抄訳版):「IBM Power10 スケールアウトおよびミッドレンジ・サーバーを発表」
- 発表製品詳細の日本語解説ブログ:「スケールアウト・サーバーとミッドレンジ・サーバーが加わったPower10プロセッサー搭載サーバー」 (各製品発表レターへのリンク有り)
今回追加されたPower10サーバーの製品仕様は「IBM Power S1014, S1022s, S1022, and S1024 - redp5675.pdf」および「IBM Power E1050: Technical Overview and Introduction」に記載されています。
IBM以外では、先日立ち上がったiWorldのサイトに「Power10 プロセッサー搭載スケールアウトモデル登場」という記事があります。IBMのブランドがIBM i 目線で書いているので、比較的分かり易いかもしれません。また、アイマガジンのWebサイトにも下記の記事が掲載されています (タイトルが長い…)。
- Power S1014などPower10ファミリー7機種が登場、スケールアウト/ミッドレンジモデル ~NVMeが標準、全モデルでサブスクリプション開始、「OpenShiftに最適化」とIBM
- 機械グループ唯一のP05、Power S1014のスペックを見る ~最小構成でも10万6300 CPW、Power9の2倍、Power8の2.5倍 高速化
下記は個人的な所感です。
- CPW観点では順当にコスト・パフォーマンスが向上。ITJungleの記事「The Power10 Machines That Will Take IBM i To 2025」(「IBMiを2025年に導くPower10マシン」)に記載されているように、Power S1014の価格/パフォーマンスは40%以上向上。
- 内蔵ストレージをNVMeに限定したのは良い判断。ただし、稼働中保守がやりにくくなるかも。
- 相変わらずミッドレンジ(E1050)でIBM i がサポートされず、お客様の選択肢を狭めるケースが予想される。
以下、パフォーマンス観点から。
- Power8~10 各モデルのCPW1を比較しました 1CPUあたりのCPWは、Power8が10,000前後、Power9が17,000前後、Power10では26,000前後となります。
- CPWはCPUだけではなく、メモリー、ディスク(ストレージ)など、システムの総合的な能力の指標値なので、NVMeの全面採用などもCPW値の向上に大きく寄与している可能性があります。AS/400の初代モデルであるB10(1988年)が2.9CPW、B70(1989年)が20CPW、さらに、810(2003年)が300CPW、890(2002年)が37,400CPW、595(2007年)が216,000CPWだったので、隔世の感があります。
- 下のグラフ「スケールアウトモデル」はポピュラーなスケールアウトモデルのCPWを比較しており、S1024の4CPUモデルが、2014年のS824 12CPUモデルに近いパフォーマンスを出しています。
- 下のグラフは「ハイエンドモデル」はハイエンドモデルの比較で、CPU数が同じ40個の場合の世代間のCPW差と、最上位モデルの能力の向上がわかります。
次のグラフでは全主要モデルのCPWをグラフ化しています。
全体を眺めると、中ほどの部分が不連続に見えます。S1024の最上位モデルとE1080の最下位モデルの性能がかろうじてオーバーラップしていますが、拡張性と価格も考慮すると連続性(ユーザー要件に最適なモデルの選択)が失われてる可能性が考えられます。
IT Jungleの記事「We Still Want IBM i On The Impending Power E1050」では、「IBMが間違っていると私たちが考えていると一貫して言ってきた分析です」と述べています。IBMがなぜミッドレンジ・モデルでIBM i をサポートしないのか知る由もありませんが、ユーザーの印象は良く無いのではと危惧します。
IBM i 7.5と合わせて今後の主流となる構成が出そろいました。今後数年間はこれをDX/モダナイゼーションの基盤/嚆矢として活用したいですね。
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CPW値は「IBM Power Systems Performance Capabilities Reference - IBM i 7.5 July 2022」を参照。最新版は「Performance and capacity」の「IBM Power Systems Performance Capabilities Reference (PCRM) 」リンクからダウンロード。IBM i がサポートされていないミッドレンジや主用途がLinux/SAPのサーバーを除く。 ↩